くまこ道

滝町昌寛の日常 くまこへの道

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「マッチ先輩」

    「マッチ先輩」



めでたくジャニーズに入ることが決まった。

私はうきうきした気持ちで、”ジャニーズ事務所”と書かれた
ドアの前に立っている。

「芸能界は挨拶が大事だって聞いたから、そこはしっかりやらなくては。」
私は心を引き締めてドアのノブを回した。

「おはようございます!」

勢いよくドアを開けた私に、事務所の人達は少しきょとんとしていたが、
すぐさま、にこやかに迎えてくれた。

事務所は思ったほど広くはなかった。
しかし、そこは一流事務所だ。
窓がとても大きくとってあり、そこからは日の光があたたかく差し込んでいた。

新たな一歩が始まるんだな。

私は心を引き締めた。

ふと、事務所の角に目をやると、
マッチさんが椅子に腰掛けていた。

「この業界、上下関係が大事だって聞いたぞ。」
私はマッチ先輩に歩み寄って挨拶をした。
私の方に振り返ったマッチ先輩は、にこっと笑って言った。
「君がマサくんか。 どうだい? これから一緒にランチでも行かないかい?」

「ありがとうございます。」


マッチ先輩の車は高級車だった。
しかも、だいぶの高級車だった。
マッチ先輩は車のレースが好きな事は芸能ニュースで知っていたので、
やはり車にお金をかけている事はすぐに合点がいった。

「マッチ先輩、いい車ですね。」

「ははは、そいかい。ありがとうよ。
 オレ、車はガキの頃から大好きだったんだ。
 いつかいい車に乗ってやる!
 ってのがオレの子供の頃からの夢だったからな。」

そう言って、マッチ先輩は前髪をかき上げた。

マッチ先輩の運転は、まあまあ上手だった。


マッチ先輩が連れて行ってくれたお店は、
そんじょそこらの高級店じゃないくらいの、高級店だった。
店内は、薄暗く、
黒い服を着た従業員が私たちを出迎えた。
マッチ先輩は常連客なんだろう。
「いつもの席を頼む。」
とだけ、言った。

店内には瀧が流れ落ちており、足元には川が流れていた。
竹も生えており、その竹藪を抜けると、茅葺屋根の茶色の様な、
離れの様な、小ぢんまりした建物へ私たちは通された。

正直、この店はどんな造りになっとるんや? と思ったが、
セレブというものは、こんな、訳のわからないもんなのかもしれない。

マッチ先輩と食べたランチは「たけのこご飯定食」だった。

「京都の朝採りたけのこです。」
と言って持って来てくれたウェイトレスの女の子が
はんぱないくらい、かわいかった。


もちろん、会計はマッチ先輩が払ってくれた。

「マッチ先輩、ありがとうございます! 本当においしかったです!。」

「いいよ、いいよ、気にすんなよ。 また、一緒に来ようぜ。」

マッチ先輩はそう言って、前髪をかき上げた。


マッチ先輩は僕を事務所まで送ってくれたあと、
「マサくん。 オレ、今日、これからサーキットの方に行かなくっちゃいけないんだ。
 チームのみんなに指示出さなくっちゃいけないからな。
 そうそう、今度の週末、レースなんだ。
 マサくんも是非来てくれよな。」
 
そう言って、マッチ先輩はアクセルを吹かして街に飛び出していった。


事務所では芸能界のしきたりを聞いて、今日は帰宅という事だった。

帰りにアパートの近くのいつもの安食堂に入って、Cセットを頼んだ。
鳥のてんぷら、餃子てんぷら、ライス、スープのセットだ。
ビンビールも一本注文しといた。


食べながら考えた。


「ランチ、すごかったなぁー。
 マッチ先輩とか、いつもあんなん食うてはるんやろうなー。
 やっぱ、スターだもんな。
 でも、ちょっと豪華すぎて旨かったかどうか、ようわからんかったなぁ。
 まあ、たぶん、旨かったんやろなー。
 マッチ先輩、いい車に乗ってはったなぁ。
 スターやもんな。
 言うても、だいぶ上の方のスターやもんな。
 そら、ええ車くらいは乗るやろうな。
 維持費も結構かかるやろな。
 そうや、レーシングチーム持ってはるくらいやもんな。
 車にお金かけんのも当たり前やわな。
 レースなぁ、 レース来てくれって言うてはったもんなー。
 
 どうしようかなー?
 
 俺、レースとか興味ないしなぁ。
 でも、先輩から来てくれって言われたら行くべし!
 しかないよなー。
 
 行くか? レース。

 まぁ、行っといた方がいいやろな。
 行ったら行ったで、レーシングクィーンみたいなん居るんやろな。
 それは、それでいいよな。
 やっぱ、ちょっとレーシングクィーンとしゃべったり出来るんやろうな。
 やばいよな。
 でも、あんな人達はグッチのかばんとか買ってくれって言うんやろうかね?
 それはかなわんな。
 俺、そんなかばんとか興味全く無いねん。
 かばん買わへん言うたら、そっぽ向かれるんやろうな。

 そらかなわんな。 なかなか難しいな。

 なんか、面倒くさいよな。

 見たくもない、車のレースとか見て、
 ”よかったっスよ!” とか、
 ”チョー感激したっスよ” とか言わなあかんにゃろな。

 でも、そう言ったら、”また見に来なよ”って誘われたりするんやろうなぁ。

 そしたらまた、レース見に行かなあかん立場になってまうで。

 やばいよな。

 同じ事の繰り返しだな。

 そら、やだな。

 デフレスパイラルだよな。

 まいったな。

 どうすっかなー。」


いつものようにCセットはおいしかった。
「おばちゃん、ごちそうさまー。」


夜の街は肌に涼しく気持ちよかった。
居酒屋の看板がきれいに見えた。
サラリーマンたちが飲んだくれてご機嫌だ。

「そうだな。」
僕は次の日、辞表を出した。


今では小さな飲み屋のマスターをしている。
時々、ラジオからマッチさんの歌声が聞こえてくる事がある。
マッチさんは今でもスターだ。
私は今もレースには興味がないが、マッチさんにはなんとなく好意を持っている。
マッチさんは僕のことをもう覚えてはいないだろうが、
僕は今でもマッチさんのことを、
先輩だと思っている。
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  1. 2010/03/31(水) 23:34:01|
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キム・ユナー
韓国の妹をやめて、
俺の妹になっちくれー!
  1. 2010/03/27(土) 22:26:03|
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増殖まさもこり様


まさもこり様続々増殖中でございます。

まさもこり様の御利益と致しましては、

?恋愛成就
?金運そして金玉運
?健康増進
などなどが見受けられる様でございます。

まさもこり様は木からの削り出しから、御顔つけ、御芯装着から仕上げ加工まで全て作者が一人で丁寧に真心込めて御作りさせて頂いております。
  1. 2010/03/25(木) 08:34:05|
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予定

自分としましては、
最近は文章を載せようと思い、
このブログにて書いてるわけですが、
ちょっと今、ばたばたしていてアップできていません。
春は畑や田んぼの準備などあったりして、
なかなか忙しいです。
寒いあいだ動かなかったからだもようやく動き始めてくれるようです。

アップする文章としては、
今、途中まで書いている、それなりに長い文章がひとつと、
頭の中にある、短めの文章がひとつあります。
近いうちにアップしたいと思っています。

でも、文章ばかりではまだまだ、というか、
文章もつたなすぎて、果たしてどうなんだろう?と思うこともあります。

僕もかたくななとこがありまして、
文章!と思えば、文章ばかりに偏る傾向があるようです。
あんまり、偏ってばかりではいけないと思う。

まあ、絵も、ここんとこ描いてなかったのですが、
あまり、文章、文章っていうわけでもなく、
絵も描いていこうと思います。
そして、このブログに載せていこうと思います。

あと、田畑の様子の写真なども載せられればと思います。

こんなブログでも、見てくれている人が何人か居てくれてる訳で、
僕も、まあ、正直なとこ、
「結構、おもしろいやん!」みたいに思っていただければうれしいわけです。

いろんな事に器用な人間ではありませんが、
やれることはやりたいと思いますので、
よろしくお願いします。



  1. 2010/03/23(火) 23:32:43|
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「俺は知っている。」

「俺は知っている。」


俺もこの業界に入って、かれこれ40年近くになる。
そう、これくらいにもなると、それなりの地位は確立するというもんだ。
中学を卒業した時、16からのたたき上げだ。
初めの頃は、よくいびられたりしたもんだ。
この業界、一見派手なイメージで見られがちだが、実際、中に入ってみると、
どうして。
その、派手なイメージとは裏腹に、
じめじめした、どろどろした人間関係、
上下関係、足の引きずりあいなんてのがゴロゴロしている。

危ないところだぜ。

俺の知ってるだけでも、何十人、何百人と、
そのどろどろの渦の中に引き込まれ、
辞めていったり、
もう、這い上がれずに底辺で妥協してる奴ら。
まあ、始めっから底辺を好んでるような奴らも居るのが事実だ。
そいつらは、お互い傷の舐め合いをしながらヨロシクやってるみたいだがな。

まあ、そとづらは華やかに見えるところがこの業界のいいところかもしれないな。

それに、この仕事はモテる。
まあ、そうだな。
確実にモテるな。

他のどの業種と比べても、負ける気はしねえな。
周りからいくらでも近づいてきやがる。
俺も、もうだいぶ古参だ。
今までだいぶいい思いもさせてもらったぜ。
でもな、そうやって尻尾振って寄ってくる奴らは全て。
そう、
全て全員と言っていい。
断言してもいいぜ。

ろくなもんじゃねぇ。


本当だぜ。


寄ってきては、欲しいものだけを俺から取っていきやがる。
そして、充分。
そうさな、
充分以上取って行ったら、いつのまにかどっかへ行っちまう。

まあな、
それはそれでいいんだ。
充分取って行って自分の力を上げて成功していく奴はまだいいぜ。
こっちもさっぱり気持ちいいからな。
でもよ、

駄目な奴もいるんだよ。
いつまでも俺の周りから引っ付いて離れやがらねえ。
寄ってくるのはたいがいが駄目な奴らなんだ。
蜜に寄ってくる蟻みたいなもんか。
いやいや、そんないいもんじゃないぜ。

糞に寄ってくる蝿だぜ。

ハッハッハッ。

そうさな、
そう言ってしまえば、俺は糞ってことか。

お笑いだな。

そのとおり


俺は糞なんだぜ!


そうさ! 俺の職業は、 糞だ!

そう! 俺は糞をやってんだぜ!!



ハハハハハハハ

ワッハハハハハハハハ・・・




  

  そんな一人芝居を見て、
  
  僕は
  泣いた。

          
  1. 2010/03/10(水) 21:04:14|
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「旅」 第二章・最終章

 -「旅」-   第二章(最終章)

窓の外の風景が変わっていくとともに列車内の景色も変わっていく。
少し興奮気味だった僕の気持ちもすっかり落ち着きを取り戻し、
そうだな、実は少し退屈な気持ちも見え隠れしている。
窓の外の景色ばかり見ているのも飽きてくるもんだ。

そろそろ乗り換え駅が近づいてきているんじゃないかな。
そう思い、時刻表を見る。
「あと、三駅か。 もうじきだな。」
リュックの中に入っているおにぎりは、乗り換えした列車の中で食べよう。
「次の列車、空いてたらいいんだけどな。」

乗り換えた電車は、東京で乗っている電車とは少し感じが違うように思えた。
シートの取り方がゆったりしているのか。
どことなく違う感じが、旅をしている気持ちを少し盛り上げてくれた。
そうだな、つり革広告も全く違うな。地方色だ。
乗客の数も少なかったので一安心だ。

ほとんどのシートが四人掛けだったので、その中のひとつに腰を下ろした。
「あー、ゆったりした気分だ。」
少し斜めになって、足を伸ばした。

僕はリュックの中から、母が作ってくれたおにぎりを取り出した。
まだ昼にはほんの少しはやいが、これといってすることも無いので、
「早めの昼食にでもするか。」
一応リュックは網棚に上げておく方がいいな。
いつ、お客さんがたくさん乗ってくるかわからないからな。
リュックは上げておいた。

列車が動きだしてしばらくしてからおにぎりを食べることにした。
弁当箱を開けると、海苔で巻かれたおにぎりが三つと、
鳥の唐揚げと、ゆでたまごが入っていた。
僕、唐揚げ好きだからな。
ありがたい。
おにぎりは大きくて丸くて、海苔が全面に巻かれているので爆弾のようだった。
そう言えば、小学校や中学校の遠足の時のおにぎりもこんなんだったな。
これって、人柄なんだろうかな。と思いながら、
一口かじっては窓の外を眺めて、窓の外を眺めては一口かじり。
おにぎりは、梅とおかかと昆布だった。

窓の外は、もうすっかり田園風景だ。
テレビで見た旅番組そのままの風景だ。
田舎作りの大きな家々の村が見え、田畑が見え、川が流れている。
村のすぐ後ろには山々が連なり、鳥たちも飛んでいる。

すべての景色がどんどん通り過ぎていく。
テレビではここまで通り過ぎない。
いいとこばかりピックアップして映してあるんだな。
僕の目の前の景色は、いい景色であれ、
そこまでいい感じじゃない景色であれ、
どんどん通り過ぎる。

どんどん過ぎていくなー。

これが旅なんだろうなー。

窓の外を眺めているとどこかの駅に着いたようだ。

乗客が結構乗ってきた。
今まで止まった駅とは様子が違うな。
ホームを見ると、どうやら地方の少し大きめの町という感じだ。
企業の工場らしきものもちらほら見える。
そんなことを思いながら窓の外を見ていると、夫婦らしき男女が僕に向かって会釈をしているのに気がついた。
「こちら、いいですか?」
やさしい笑顔で男性が声をかけてきた。
僕は、はっ、と我に返り。
「どうぞ」と返事をした。

その男性は、奥さんであろうその人を窓際にエスコートして、
僕の座っていた四人掛けのシートに腰を下ろした。
女性は席に着くと丁寧に僕にお辞儀をした。
僕も恐縮して、お辞儀を返した。
男性はにこやかな笑みを見せた。
上品な感じの夫婦だな。
ちょうど、僕の両親と同じくらいの年齢に見えた。
僕の両親はここまで上品じゃないけど。

男性の方は、大きめの荷物を2個、網棚に上げ始めた。
その都度、奥さんに出しておく物はないか聞いていた。
「ええ、大丈夫。」
奥さんはやさしく答えていた。
荷物も上げ、ようやく落ち着いたろうか、
ジャケットを正しながら腰を下ろした。
にこやかに微笑み合っていた。

仲のよい夫婦だな。
僕はこの四人掛けのシートに座っているのが少し照れくさくなった。
これも旅の出会いなのだなと思い、
少し肩幅を狭めた。

列車は何事もなく走っている。

ぼんやり窓の外を眺めていると、奥さんが手のひらにみかんを乗せて、
僕に差し出してくれた。
「どうぞ。」
上品なやさしい笑顔でみかんを勧めてくれた。
よく熟したみかんは十分甘かった。
その夫婦は本当に仲がよく、楽しげに二人で話していた。
どうやらこれから温泉旅行のようだ。
人の話を盗み聞きするつもりはないが、やはりどうしても言葉の端々が耳に入ってくる。

このくらいの歳の人になると、僕が泊まるようなこじんまりとした安めの宿とかじゃないんだろうな。
ちょっと、上等の宿なんだろうな。
旦那さんの服装も清潔感があって上品だもんな。
部長さんといったところか?
っていっても、僕には部長というのがどんなもんかわからないけけどな。
会社の中でもえらい方なんだろうということは感じている。
中の上というか、上の下というか、そんなとこだろうな。
責任があって、部下をまとめて、プロジェクトを成功させる!みたいな。
そんな感じだな。
まあ、話し方も丁寧で、やさしさもあるし、また、声がなかなか低くて渋いから、きっと部長だな。
なかなか男前だしな。
髭もきれいに剃ってある。
髪の毛も豊かだ。
白髪が少し混ざっているが、そのあたりがまた、
男の哀愁、というのかな? ダンディズム? みたいな。
大人の男感を醸しだしている。
左手首にちらりと見え隠れする時計もきっと上等だよ。
きらっとしてるけどシンプルでゴテゴテしてないから、あれは上等だね。
靴もぜんぜん汚れてないもんな。
皮だな。
皮だけど歩きやすそうな機能的な革靴だ。
茶色い皮だ。
背も少し高めだからモテルだろうなきっと。
笑った顔の口元にやさしさが見えるな。
うむ。

奥さんはきっと歳のわりにだいぶ若く見える様子だな。
かわいい感じだ。
派手な感じはまったく無い。
色白だし、きっと若いときはモテただろうな。
今でも十分かわいい感じがあるもんな。
ちょっと小柄で、そうだな、
目の開き方がいいのかな?
なんだか魅力があるな。

僕の両親と比べたら、、、
まあ、比べるのもおかしな話だけど、
街頭インタビューで、どっちの夫婦が素敵に見えるかの調査したら、
きっと目の前のこの夫婦だろうな。
でも、まあ、面白さで言ったら僕の両親だろうけどな。

その夫婦はガイドブックを取り出してこれから行くんであろう温泉街の写真をみたり、
情報を調べたりしていた。
楽しそうだなぁ、と思った。
僕はまだ女子と付き合ったことはないけど、
もし付き合ったらこんな感じで楽しいんだろうなぁ。
ちょっと、はづかしいけど、かなり羨ましいな。

窓の外からあたたかい日差しが。
さっき、お昼ご飯のおにぎり食べたし。
もう、かれこれ、電車に乗って四時間ほどか。

なんだか、少しねむたくなってきたな。
と思っているうちに。 

寝てしまった。



携帯の着信音が鳴っている。

僕のじゃないぞ。
僕はこんな音じゃないし、それにマナーモードにしてるから。
まだ、ねむい。


まだ、寝よう。


着信音はしばらくして鳴り止んだ。

うっすら眠りの中、旦那さんの声が聞こえてきた。
「誰からだった?」


「主人よ。でもいいの。後でなんとか連絡しとくわ。」


「うん。」



 ”?”

 え?   ・・・

 ・・・ん??

 でも、目は開けなかった。
 なんだかあんまりよくわからなかった。

 ?


旦那さんの声が聞こえてきた。
「もう、後戻りはできないからね。」


 ?


「え?」

「何?」


「ええっ?」


 どーいう事だ?
 これは、いったい、どーいう事なんだ?

 もしかして、   え?


僕は、どきどきしてきた。
すごくどきどきしてきた。
でも、目は開けなかった。
目をじっとつむって、
あたまの中を整理しようとした。

おでこが、耳が、熱くなってきた。


ふりんか?
これが、ふりんなのか?


 うわ、やっば、



いつ、目開けたらいいだろ。


とにかく二駅ほど目をつむっていた。

電車のゆれと同時に首をかくん、として、
目をこすりながらうすらうすら目を開けた。

夫婦は、僕が寝る前と同じ様に仲がよい。
夫婦?

それは、わからない。
でも、目の前の二人が仲がよいのは確かだ。

僕は目をこすりながら、結構なスピードで通り過ぎていく木々や山々を眺めた。
眺めているフリをした。

どきどきが少し落ち着いてきた頃。

目の前の二人は荷物を網棚から降ろし、温泉街のある駅で降りていった。
僕に笑顔で挨拶をして。


僕の座っている四人掛けのシートはまた、
僕一人になった。

僕は時刻表を取り出して、あとどれくらいか確かめた。

「あと、50分ほどか。」


僕は頭を冷たい窓にもたれかけさせて、
ほおづえをついた。



  旅は少年を大人にし、
  
  世の中は多様性をみせつける。

  善は必ずしも善ではなく、

  悪は必ずしも悪ではない。 


                 以上


  1. 2010/03/09(火) 23:31:50|
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「旅」 第一章

「旅」 第一章でございます。
今回はなかなかだらだらした文章になってしまっています。
申し訳ないですが、最後まで読んでいただければ幸いです。
ちなみに第二章までございます。

では、どうぞ。

- 「旅」 - 第一章

「いってきます。」
僕は小さめのリュックをかついで玄関の扉を開けた。
リュックの中には、3日分の着替えの他に母親が今朝にぎってくれたおにぎりが入っている。
両親がにこやかな笑顔をみせて僕の肩をたたいて見送ってくれている。
その笑顔の中には少し心配している影も見えた。

「くれぐれも気をつけてね。叔母さんには電話しておくからね。何かあったらすぐ連絡しなさいよ。」
母親は強く僕の腕をつかんだ。

「うん、わかった。行ってくるよ。」
そう言って僕は両親の視線を振り切って駅の方へ下り坂を降りていった。
振り返るか、振り返らないか迷ったが、なんだか振り返ってしまった。

母親が大きく手を振っている。
父親は片手をポケットに突っ込みながら、もう片方の手を上げて僕を見送っていた。
僕は小さく手を振って、駅の方へ歩いていった。
もう、振り返らない。

春の日差しがほんのり暖かい朝だ。
僕は春休みを利用して、岩手に居る叔母の家に行く事にした。
叔母の家で二泊して、それから一人で第三セクターの電車で2時間ほどのところにある鍾乳洞に行く。
鍾乳洞のほかも歴史民族資料館もあるということだから、是非とも寄りたいと思っている。
その地方には、少しめずらしい石が採れるらしく、資料館にはそれらの石も展示してある。
地方によって、石は色々な姿を見せるのだ。
なにかいい石が手に入れられたらいいんだけどな。
そして、宿で一泊するのだ。
一人で泊まる。
宿はもう予約済みだ。父親が電話してくれた。
この一日が本当の一人旅であり、今回の旅の本丸である。
そこは温泉宿で、その地方は鉱山だったようで、そこのお湯は金属の成分が強い、茶色いお湯らしい。
料理は山菜や川魚を使ったものだそうだ。ちょうど、春の山菜が多く採れる季節。
楽しみだ。

小学生の頃から、何となく”旅”というものに強い興味を持っていた。
テレビで旅番組がやっていると夢中になって見たもんだ。
電車が田園風景の中を駆けていく、
海岸線近くを、そして、山々の間を走り抜けていく姿。
富士の見える景色。
田畑で働く人たち、漁村の風景、温泉や隠れ宿。
土地の料理や、地元の祭り。
僕はそういう風景に見とれていた。

一人旅がしたいとせがんでいた僕に、ようやく許しがでたのが今回だ。
母親はずっと心配だったのだろう、一人旅には反対していたが、
”高校受験に合格したお祝いだ”という事で、父が後押しをしてくれた。
何よりもうれしいお祝いだ。

初めて一人で電車に乗って遠くへ行くのだ。
忘れ物がないように何度もリュックは確認した。
携帯の充電も満タンにしておいた。
もちろん充電器もリュックに入っている。
デジカメは上着のポケットに入れることにした。
いつでも写真をとれるように。
切符もポケットに入っている。
お小遣いも父が奮発してくれた。自分が貯めておいたものも合わせて、十分だ。
大丈夫、すべて確認済みだ。

駅まで向かういつもの道も、今日はなんだか違ったように見える。
どこがどう違うかわからないけど、何となく明るい。
春だからかな?
三鷹の駅が見えてきた。
ポケットの切符を取り出して確認する。
青春18切符だ。
この切符はどこまでも行ける切符なんだ。
その日のうちならどこまでも行ける。
この切符で一人旅がしたかったんだ。
どこまでも行ける切符で。

改札の駅員さんに切符をみせると、今日の日付の入ったスタンプを押してくれた。
今日中は何回乗り降りしようが、どこまでも行ける。
改札をぬける。
さぁ、これでスタートだ。
ようやく始まった。もう、後戻りはできない。

一人旅のスタートだ。

  1. 2010/03/09(火) 20:15:50|
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「夢」

「夢」


「はい、私、パートで月給8万円いただいております。
年間で96万円ほどといったとこでございましょうか。
夫婦共働きですので、決して贅沢はできませんけど、
なんとかやっております。」

「え? 年齢ですか?
年齢は50歳でございます。
ねずみです。 早生まれの。」

「生活? 生活ですか?
はい。それなりにやっておりますよ。 はい。
不便? そうですね。
不便は、、あるといえばありますけど、、
でもね、そりゃあね、あれも欲しいこれも欲しいなど言えばきりはありませんでしょ?
まあね。
贅沢言っても、それは仕方ありません。
仕方のないことだと思っております。
そう思ってしまえば、そんなに悪くない生活だと思ってますよ。

もし、もしね。
私がですよ、
プール付きの豪華な家に住んでごらんなさい。
コサージュの付いた、ラメがたくさん入ったドレスなんて着てごらんなさい。
ディナーに大きなローストビーフなんか出てきてごらんなさい。
ああ、しんどい。
私はそれを想像しただけで、しんどくなってしまいます。
だからいいんですよ。 これで。
きっと、これがあたしの性分なんですよ。」

「え? 欲しいものですか?
はぁ、 そうですね。
欲しいものね、、 何でしょうかね?
うーん。

そうね、 そう!
バッグが欲しいわ!
あの、、、 あれよ、あれ、何て言ったかしらね?
牛皮の、、
茶色のね、、
あれ、何て言いましたっけ?
高級ブランドのバッグよ。
昨今は若い女の子も結構持ってるのをよく見かけるわ。
あの、茶色い、
ほら、
忍者が持つ手裏剣みたいなマークがたくさんついてるのあるでしょう?
あれ。
あれが欲しいわ。
あんなバッグを持って婦人会に出席したいのよ。
そうね。
それが欲しいわね。
きっと、近所の佐藤さんなんか目を丸くして聞いてくるわよ。

”それ、どうしたの?”って、
”それ、どこで買ったの?”って、
”それ、本物なの?”って。

でもね、あたし、何も返事してやらないのよ。
そして、”ふふっ”て笑顔で答えるのよ。

ほんと、目に浮かぶわ。
佐藤さんの顔が。」

「いいでしょ。」

「え? 他に?
他に欲しいものはないかって?
そうね。
うーん。

どうかしらね。

うーん。
思いつかないわねー。
これといってないかしらねぇ。」


「ねぇ、あなた、
どうして私にそんなこと聞くのよ?」


「あなたに宝くじが当たりました。
1等、三億円です。
おめでとうございます。」


  1. 2010/03/01(月) 09:52:23|
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