くまこ道

滝町昌寛の日常 くまこへの道

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「蟻の渡り」  第二章 最終章

「蟻の渡り」 第二章

穏やかな晴れた午前でした。

娘の種子は庭にしゃがみこんで、なにやらせっせと遊んでおります。
どうやら、娘は砂いじりが好きなようです。
砂いじりというのか、土いじりというのか、
とにかくお気に入りのプラスチックの赤いスコップで
何やら地面をせっせと突っついております。
何が楽しいのか私にはわかりませんが、一心不乱に地面を突っついております。
まあ、満足している様子なので微笑ましく見守っております。

ほんのり暖かな、やわらかい風がふと我を忘れさせてくれます。

ぼんやりしていると娘が私の方に向かって、
「蟻、蟻、」と言っております。

ん?
と思い、娘の方に近寄りますと、蟻が行列を作って娘の足元を渡っていきます。

「ふむ、蟻さんが行列しているね。」と、言いますと、娘が、
「蟻さんが、虫さんを運んでいる。」と申します。

ふむ。よく見ますと、行列の中に所々、虫の死骸を運んでいる蟻が居ります。
娘はその様子をじっと見つめておりました。
虫の死骸は、もうバラバラになっております。
たぶんバッタか何かでしょう。
頭だけを運んでいるものもあり、足だけを運んでいるものもあります。
行列の後の方からは羽が運ばれてきます。その後ろからは何匹もの蟻が協力して、
少し大きな塊の、お腹の一部のようなものを運んでいます。

娘が私の方を見て言います。
「虫さんを運んでどうするのかな?」
娘はじっと私の目をみつめました。

私は少し慌てて、娘の視線をそらせました。
それは、どう答えていいんだろう? と思うのと、
娘の視線の強さに自分が耐えれなかったのだと思います。

私は考えました。
どう答えればいいんだろう?


----------------------------------------------------------------------------


「蟻さんたちは、死んじゃった虫さんの死骸を持って帰ってお墓を作ってあげるんだよ。」


そんなことが言えるだろうか?
きっと、それは嘘だ。

私は今まで昆虫のことに関心をもったこともないし、テレビで虫に関する番組が放映されていても、
すぐさまチャンネルを変えていたほうだ。
ファーブル昆虫記も読んだ事はない。
全く持って虫のことは知らない。
だけど、蟻が虫の死骸を自分の巣に持って帰って、
墓を作るなぞということは全く持ってないと言える。

蟻がそんなことをするわけがない。

どう答えればいい?


「蟻は、虫の死骸を巣に持って帰って、食べるんだよ。」

そう答えるか?



「たべちゃうんだよ。」

「蟻は虫を食べるんだよ。」

そう答えるか。



「食べる。」



私は娘の方に振り返りました。

きっと私の眉毛は少しひしゃげて垂れ下がり、
口元は変なつくり笑顔っぽい形をしていたでしょう。



すると娘は何事もなく、しゃがみこんで、地面に向かって、
せっせ、せっせと一心不乱に土を突っついておりました。


私の眉間にあった浅いしわは、ほんのりほどけていきました。



あたたかい午前であります。
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  1. 2010/02/22(月) 21:07:07|
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