くまこ道

滝町昌寛の日常 くまこへの道

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「旅」 第二章・最終章

 -「旅」-   第二章(最終章)

窓の外の風景が変わっていくとともに列車内の景色も変わっていく。
少し興奮気味だった僕の気持ちもすっかり落ち着きを取り戻し、
そうだな、実は少し退屈な気持ちも見え隠れしている。
窓の外の景色ばかり見ているのも飽きてくるもんだ。

そろそろ乗り換え駅が近づいてきているんじゃないかな。
そう思い、時刻表を見る。
「あと、三駅か。 もうじきだな。」
リュックの中に入っているおにぎりは、乗り換えした列車の中で食べよう。
「次の列車、空いてたらいいんだけどな。」

乗り換えた電車は、東京で乗っている電車とは少し感じが違うように思えた。
シートの取り方がゆったりしているのか。
どことなく違う感じが、旅をしている気持ちを少し盛り上げてくれた。
そうだな、つり革広告も全く違うな。地方色だ。
乗客の数も少なかったので一安心だ。

ほとんどのシートが四人掛けだったので、その中のひとつに腰を下ろした。
「あー、ゆったりした気分だ。」
少し斜めになって、足を伸ばした。

僕はリュックの中から、母が作ってくれたおにぎりを取り出した。
まだ昼にはほんの少しはやいが、これといってすることも無いので、
「早めの昼食にでもするか。」
一応リュックは網棚に上げておく方がいいな。
いつ、お客さんがたくさん乗ってくるかわからないからな。
リュックは上げておいた。

列車が動きだしてしばらくしてからおにぎりを食べることにした。
弁当箱を開けると、海苔で巻かれたおにぎりが三つと、
鳥の唐揚げと、ゆでたまごが入っていた。
僕、唐揚げ好きだからな。
ありがたい。
おにぎりは大きくて丸くて、海苔が全面に巻かれているので爆弾のようだった。
そう言えば、小学校や中学校の遠足の時のおにぎりもこんなんだったな。
これって、人柄なんだろうかな。と思いながら、
一口かじっては窓の外を眺めて、窓の外を眺めては一口かじり。
おにぎりは、梅とおかかと昆布だった。

窓の外は、もうすっかり田園風景だ。
テレビで見た旅番組そのままの風景だ。
田舎作りの大きな家々の村が見え、田畑が見え、川が流れている。
村のすぐ後ろには山々が連なり、鳥たちも飛んでいる。

すべての景色がどんどん通り過ぎていく。
テレビではここまで通り過ぎない。
いいとこばかりピックアップして映してあるんだな。
僕の目の前の景色は、いい景色であれ、
そこまでいい感じじゃない景色であれ、
どんどん通り過ぎる。

どんどん過ぎていくなー。

これが旅なんだろうなー。

窓の外を眺めているとどこかの駅に着いたようだ。

乗客が結構乗ってきた。
今まで止まった駅とは様子が違うな。
ホームを見ると、どうやら地方の少し大きめの町という感じだ。
企業の工場らしきものもちらほら見える。
そんなことを思いながら窓の外を見ていると、夫婦らしき男女が僕に向かって会釈をしているのに気がついた。
「こちら、いいですか?」
やさしい笑顔で男性が声をかけてきた。
僕は、はっ、と我に返り。
「どうぞ」と返事をした。

その男性は、奥さんであろうその人を窓際にエスコートして、
僕の座っていた四人掛けのシートに腰を下ろした。
女性は席に着くと丁寧に僕にお辞儀をした。
僕も恐縮して、お辞儀を返した。
男性はにこやかな笑みを見せた。
上品な感じの夫婦だな。
ちょうど、僕の両親と同じくらいの年齢に見えた。
僕の両親はここまで上品じゃないけど。

男性の方は、大きめの荷物を2個、網棚に上げ始めた。
その都度、奥さんに出しておく物はないか聞いていた。
「ええ、大丈夫。」
奥さんはやさしく答えていた。
荷物も上げ、ようやく落ち着いたろうか、
ジャケットを正しながら腰を下ろした。
にこやかに微笑み合っていた。

仲のよい夫婦だな。
僕はこの四人掛けのシートに座っているのが少し照れくさくなった。
これも旅の出会いなのだなと思い、
少し肩幅を狭めた。

列車は何事もなく走っている。

ぼんやり窓の外を眺めていると、奥さんが手のひらにみかんを乗せて、
僕に差し出してくれた。
「どうぞ。」
上品なやさしい笑顔でみかんを勧めてくれた。
よく熟したみかんは十分甘かった。
その夫婦は本当に仲がよく、楽しげに二人で話していた。
どうやらこれから温泉旅行のようだ。
人の話を盗み聞きするつもりはないが、やはりどうしても言葉の端々が耳に入ってくる。

このくらいの歳の人になると、僕が泊まるようなこじんまりとした安めの宿とかじゃないんだろうな。
ちょっと、上等の宿なんだろうな。
旦那さんの服装も清潔感があって上品だもんな。
部長さんといったところか?
っていっても、僕には部長というのがどんなもんかわからないけけどな。
会社の中でもえらい方なんだろうということは感じている。
中の上というか、上の下というか、そんなとこだろうな。
責任があって、部下をまとめて、プロジェクトを成功させる!みたいな。
そんな感じだな。
まあ、話し方も丁寧で、やさしさもあるし、また、声がなかなか低くて渋いから、きっと部長だな。
なかなか男前だしな。
髭もきれいに剃ってある。
髪の毛も豊かだ。
白髪が少し混ざっているが、そのあたりがまた、
男の哀愁、というのかな? ダンディズム? みたいな。
大人の男感を醸しだしている。
左手首にちらりと見え隠れする時計もきっと上等だよ。
きらっとしてるけどシンプルでゴテゴテしてないから、あれは上等だね。
靴もぜんぜん汚れてないもんな。
皮だな。
皮だけど歩きやすそうな機能的な革靴だ。
茶色い皮だ。
背も少し高めだからモテルだろうなきっと。
笑った顔の口元にやさしさが見えるな。
うむ。

奥さんはきっと歳のわりにだいぶ若く見える様子だな。
かわいい感じだ。
派手な感じはまったく無い。
色白だし、きっと若いときはモテただろうな。
今でも十分かわいい感じがあるもんな。
ちょっと小柄で、そうだな、
目の開き方がいいのかな?
なんだか魅力があるな。

僕の両親と比べたら、、、
まあ、比べるのもおかしな話だけど、
街頭インタビューで、どっちの夫婦が素敵に見えるかの調査したら、
きっと目の前のこの夫婦だろうな。
でも、まあ、面白さで言ったら僕の両親だろうけどな。

その夫婦はガイドブックを取り出してこれから行くんであろう温泉街の写真をみたり、
情報を調べたりしていた。
楽しそうだなぁ、と思った。
僕はまだ女子と付き合ったことはないけど、
もし付き合ったらこんな感じで楽しいんだろうなぁ。
ちょっと、はづかしいけど、かなり羨ましいな。

窓の外からあたたかい日差しが。
さっき、お昼ご飯のおにぎり食べたし。
もう、かれこれ、電車に乗って四時間ほどか。

なんだか、少しねむたくなってきたな。
と思っているうちに。 

寝てしまった。



携帯の着信音が鳴っている。

僕のじゃないぞ。
僕はこんな音じゃないし、それにマナーモードにしてるから。
まだ、ねむい。


まだ、寝よう。


着信音はしばらくして鳴り止んだ。

うっすら眠りの中、旦那さんの声が聞こえてきた。
「誰からだった?」


「主人よ。でもいいの。後でなんとか連絡しとくわ。」


「うん。」



 ”?”

 え?   ・・・

 ・・・ん??

 でも、目は開けなかった。
 なんだかあんまりよくわからなかった。

 ?


旦那さんの声が聞こえてきた。
「もう、後戻りはできないからね。」


 ?


「え?」

「何?」


「ええっ?」


 どーいう事だ?
 これは、いったい、どーいう事なんだ?

 もしかして、   え?


僕は、どきどきしてきた。
すごくどきどきしてきた。
でも、目は開けなかった。
目をじっとつむって、
あたまの中を整理しようとした。

おでこが、耳が、熱くなってきた。


ふりんか?
これが、ふりんなのか?


 うわ、やっば、



いつ、目開けたらいいだろ。


とにかく二駅ほど目をつむっていた。

電車のゆれと同時に首をかくん、として、
目をこすりながらうすらうすら目を開けた。

夫婦は、僕が寝る前と同じ様に仲がよい。
夫婦?

それは、わからない。
でも、目の前の二人が仲がよいのは確かだ。

僕は目をこすりながら、結構なスピードで通り過ぎていく木々や山々を眺めた。
眺めているフリをした。

どきどきが少し落ち着いてきた頃。

目の前の二人は荷物を網棚から降ろし、温泉街のある駅で降りていった。
僕に笑顔で挨拶をして。


僕の座っている四人掛けのシートはまた、
僕一人になった。

僕は時刻表を取り出して、あとどれくらいか確かめた。

「あと、50分ほどか。」


僕は頭を冷たい窓にもたれかけさせて、
ほおづえをついた。



  旅は少年を大人にし、
  
  世の中は多様性をみせつける。

  善は必ずしも善ではなく、

  悪は必ずしも悪ではない。 


                 以上


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  1. 2010/03/09(火) 23:31:50|
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